1.交運労の基本的な立場
値上げ申請の前に、現状の労働者・国民の生活実態を論じずに単に賛成・反対を論ずることは、労働組合として無責任な態度と言うほかない。
労働組合は、そこで働いている労働者の向上はもとより、国民生活全体を考え、その方針を掲げる必要が望まれると考えるものである。
そのことを踏まえて、現状の労働者の貧困・格差社会という今日の情勢で値上げが適当なのかいささか疑問に思う。
産業再生法・規制緩和・構造改革のもとで年収、200万円以下の労働者が1.000万人もいる。賃金は、大多数の元で値上げより、賃下げで働いている労働者が大多数である。景気は大企業を中心に「空前の利益」を上げている。しかし、中小企業や労働者国民はそれとはまったく裏腹に、経済的貧困の状態の中で自殺者も年に3万人以上に及び、依然として4%台という完全失業状態。
個人破産者は減少傾向にあるとは言うものの、個人民事再生や特定調停の申立ては依然として高い水準にある。
言いかえれば、今、置かれている労働者国民には経済的余裕などまったくないと言うことである。ふところがさびしい状況で業界が提唱している運賃が引き上げられたならば、利用者は激減することは必死であり、値上げによって、タクシー労働者の賃金もまた大きく減少してしまうものと考える。私たち交運労は、今回のこの時期での運賃値上げは反対である。
タクシーは、「公共事業」とも言われる産業であり、市民の「足」であり、気軽に、安く・安心・安全に利用できなくてはならないものと考える。
2.タクシー労働者の安心・安定について
@ 交運労は運賃の値上げによって、労働者の安心を得ることはできないと考える。今でも、改善ができる。
第一に、労働者に対して完全累進歩合給の廃止と無法地帯の労働基準法を業界に守らせることで安心を手にすることができる。
現在得ている、賃金のうち60%を基本給にして、残りを残業・深夜・休日、20%を歩合給にすれば「安心・安定」の下敷きを確保すことができる。
イ、安定した「月給制」の実現。
ロ、拘束労働時間の徹底。
ハ、週40時間労働制の実現。(一月は12乗務)
ニ、休憩時間の徹底。
ホ、年次有給休暇の完全取得の実現。
ヘ、年休の賃金計算の履行。
ト、残業・深夜・休日手当の割増賃金。(2割5分・3割5分)
A @だけでは当然に「安心」の限界が生じる。そこで交運労は、利用者の90%以上が地元の市民であり、税金の投入をすべきであると解く。
イ、規制緩和を撤回し、区市町村の人口に見合った車両台数に「規制」を加えるべき。
3.当面の運賃改定が実施された場合について
上記の交運労方針の立場でこの問題を対応しつつ、運賃改定の公示された場合、下記の要求の獲得をめざす。
ア、経営者に対する要求について
@安定した「月給制」の実現。
A拘束労働時間の徹底。
B週40時間労働制の実現。(一月は12乗務)
C休憩時間の徹底。
D年次有給休暇の完全取得の実現。
E年休の賃金計算の履行。
F残業・深夜・休日手当の割増賃金。(2割5分・3割5分)
G現行行なわれている足切の引下げ、累進歩合の引上げ。
イ、行政当局に対する要求について
@ 累進歩合給の廃止と基本給制定の通達を発すること。
A 規制緩和を廃止し、区市町村の人口に見合った車両台数に減車若しくは車両の確保を行なうこと。
B 事業者の申請どおりに実行されているのか追跡調査を行い、実行されていない場合は行政指導・あるいは摘発し、運賃改定申請を白紙にすること。
C 労働条件改善のために区市町村は業界に税金を投入すべきであること。
4.交運労の提言について
現行のタクシー業界は、年金者労働者が3割にも達しているといわれている。一つには、年金の大改悪で年金だけでは生活ができなくなっていることを意味している。今や、タクシー労働者は年金者の仕事ともいわれている。
しかし、この年金者(団塊の世代)も後10年ないし15年先にはタクシー労働者からいなくなる事は必然である。
今の累進歩合給や長時間労働では、若者が「魅力がない」ということでほとんど新規採用がされていない。そうすると、業界は必然的に減少もしくは経営ができなるのである。こんなことを許さない、利用者も労働者も「安心・安全・安定」の社会作りを労使はもとより、行政も真剣に「累進歩合給の廃止・長時間労働の見直し」を検討すべきであると提言するものである。
5.具体的な要求と闘い方について
以上の目標を実現させるために、具体的に次に掲げる方針で取り組む。
@ 学習に力点をおく。
A 宣伝を活発に行なう。
B 組織拡大に力点を行なう。(個人加盟はもとより新支部結成をめざす)
C 春闘統一要求書を作成し、経営者に要求を提出する。
D 関係官庁交渉を行なう。
E 市町村交渉を行なう。
F 現行の諸法規に反する業者については告発を活発に行なっていく。
以 上
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